愛媛大学工学部附属船舶海洋工学センターの水口隆准教授らの研究グループはこのほど、埋もれアーク溶接用の新しいフラックス入りワイヤを共同開発した。従来のアーク溶接と比べて深い溶込みが得られることから、溶接パス数の低減が可能となり、高能率溶接が実現できる技術として期待される。
愛媛県今治地区は、国内有数の造船産業集積地域であり、船体には多量の厚鋼板が使用されている。厚鋼板同士を接合する溶接は、造船施工の中で最も重要な工程の一つであるが、多大な工数がかかるため、溶接現場における溶接の高能率化ニーズが非常に高い。
研究グループではニーズに応える技術の確立に向けて、一般的なアーク溶接と比較して、母材のより深い部分にアークによる入熱を与えることができる埋もれアークという現象に着目。この現象を利用した深い溶込みと安定した溶接が可能な新しいフラックス入りワイヤを開発。
新技術により、溶接パス数の低減が可能となり、高能率な溶接が可能となった。今後は開発したワイヤの今治地区造船関連企業へのテスト販売を行い、本格販売へとつなげる予定だ。
研究グループでは「今後も溶接の高能率化に向けた研究開発に取り組み、今治地域の造船産業の国際競争力の強化と活力ある個性豊かな地域社会の形成に寄与したい」と展望を示す。
提供元:産報出版株式会社