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溶接接合業界ニュース

東レ、航空機向けCFRPの熱溶着技術開発

 東レ(東京・中央区)は2月1日、航空機向けの炭素繊維複合材料(CFRP)を熱溶着で高速に接合する技術を開発したと発表した。CFRPの表面に熱溶着層を形成させ、部材の表面を瞬間的に加熱することで接合を行う。「溶接のように高速かつ高強度で接合できる」(同社)。従来用いていた接着剤やボルトなどを使わないため、生産性の向上と同時に軽量化が実現できる技術として期待される。
 開発した技術は熱硬化性CFRPの表面に熱溶着層を形成させる同社の技術を応用。具体的には、接合する部材間を熱板で瞬間的に加熱し、加圧することで溶着する。従来、CFRPの接合に適用されていた接着やボルトファスナーの締結が不要となり、CFRPの部材同士や、熱硬化性CFRPと熱可塑性CFRP間での接合が可能となる。
 同技術の熱溶着層をもつ熱硬化性CFRPは現行の航空機向けCFRPと同等の力学特性を持つとともに、熱溶着した構造体は現行のCFRP一体成形品と「同等の接合強度を持つことを実証した」。
 また、接合技術の実用化検討に向けた実証試験では「航空機の要素形状を模擬したデモンストレーターで、熱硬化性CFRPの部材を熱溶着で高速接合することに成功した」。
 これら技術により、同社ではアルミ合金機体と同等以上の生産性を実現したとする。また同技術を適用したCFRP製機体はアルミ合金製機体対比で、ライフサイクル全体の二酸化炭素排出量削減と、ボルトの重量削減による機体の軽量化につなげている。
 世界の航空機需要は、新型コロナウイルスにより大きく低迷していたが、2025年までには再拡大期に入り、30年以降には座席数が120―240席の次世代航空機の大型需要が予想されている。
 航空機構造のメインフレームとなる一次構造材には、長年の使用実績から高い信頼性を持つ熱硬化性CFRPが適用されているが、部材組立での接着接合とボルトファスナーによる複雑な締結工程が障壁となり、アルミニウム合金製の機体に比べて適用が進んでいなかった。このため、さらなる軽量化が見込まれるCFRP適用に向けて接合工程の生産性向上が重要な課題となっていた。
 東レはこれまで米・ボーイング社と連携し、技術開発を推進しており、今回の技術も両社のパートナーシップの一つとして実施した。また本成果の一部は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業「次世代複合材創製・成形技術開発プロジェクト」として行った。
 同社では、同技術の実証試験を進め、機体へのCFRP適用を進めていく方針。


提供元:産報出版株式会社

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