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高校生溶接競技会が就職の成果に

 長野県高校生溶接コンクールで優勝の長倉直人選手(須坂創成高校2年)と、2022年度全国ものづくりコンテスト溶接競技部門で全国2位の山川未浩選手(向の岡工業高校3年、神奈川県)の2人は、競技会の好成績を背景に溶接士を志望している。
 長野県高等学校校長会工業部会は長野県溶接協会の後援で、昨年12月10日に中野立志館高校(長野県中野市)の機械電気棟にて、9回目となる長野県高校生溶接コンクールを開催。須坂創成高校の長倉直人選手(2年)が最優秀賞に輝いた。
 溶接を初めて2ヵ月だという長倉選手は、「溶接に触れた時間は短いが、近隣にある前田鉄工所の溶接士が週に3回溶接の授業をしてくれたため自信があった。優勝は嬉しいが、それ以上に、溶接を教えてくださった前田鉄工所に入社して溶接を通じて恩返しがしたいという思いが強い」と話す。
 長倉選手の指導にあたった前田鉄工所で執行役員を務める上條孝宏製造部長は「溶接はある程度の実力がなければ楽しさややりがいに気が付きにくい技能だ。高校生の場合、溶接に触れる機会がなく卒業する生徒も多いため、溶接コンクールに臨むのであれば、技術と一緒に溶接の魅力も伝えたい」と話す。事実、同社の溶接士が指導にあたった長倉選手の夢は溶接士になったようだ。
 神奈川県溶接協会は、神奈川県高校生溶接コンクールを開催するだけではなく、それに向けた「溶接練習会」を開催している。練習会で生徒に溶接技能を教えている?松真教諭は、「一般的に工業高校では、日常的な授業で溶接に触れる時間を多くとれないという状況にある。学生の溶接技術のレベルは、そのまま高校の教員の溶接技術のレベルと比例している。溶接を教える人材が居る学校と居ない学校では、習得する技術の差は大きい。だからこそ、コンクールや練習会のようなイベントを通じて、生徒だけでなく教員にも溶接のノウハウを伝えて少しでも学校ごとの溶接技術の差が埋められるようにしたい」と話す。
 練習会を通じた取り組みは着実に華開いており、例年、神奈川県高校生溶接コンクール、溶接練習会に参加している向の岡工業高校の、山川未浩選手(現在3年生)は、2022年度の全国ものづくりコンテスト溶接競技部門で全国2位になるという快挙を成し遂げた。
 山川選手は「コンクールという目的があるからこそ、日々『どのように溶接したら美しいビードが引けるか』といったことを学生同士で話し合うことで上達すると思っている。反復練習を行うといっても、限られたテストピースを溶接して練習するしかないため、1回1回、出来上がったビードについて『より頭を下げる溶接姿勢にしたら溶融部がよく見えた』など、話し合いながら反復していくことが重要だ」と話す。
 「甲子園を目指す生徒の多くがプロ野球選手を目指したことがある」と聞くと納得できるように、コンクールでの入賞・優勝を目指して溶接を学んだ生徒も、溶接士を目指す傾向が高まることは言うまでもない。技能者不足のキーワードとしてはデジタル化などの対策が必須とされているが、「熱量を持って溶接に触れる場所を用意すること」も、技能者不足の解決の切り札の一つとなり得るようだ。


提供元:産報出版株式会社

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