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溶接接合業界ニュース

今年、注目を集めた溶接の「DX」

 今年、最も注目を集めた技術の一つにDX(デジタルトランスフォーメーション)がある。7月に開催した2022国際ウエルディングショーでも高い注目を集め、多くの企業から関連技術の出展がみられた。これまで大手企業の取り組みが中心だったが、最近は中堅・中小企業における取り組みも目立ってきており、DXの導入は広く産業界に浸透してきており、溶接事業所においても様々な取り組みが進めてられている。
 富山市のコンチネンタル(岡田俊哉社長)は、手掛ける構造物をデジタルデータ化して生産性向上を勧めたことで、勤務する溶接士が溶接技術に磨きをかけて、パーマロイ合金の溶接といった超高難度の溶接技術を手にした。これは、デジタルデータ化というDXの最初の一歩だが、「更に高難度溶接依頼を引き受ける」という変革が起きた事例だ。
 具体的に同社では、アマダ生産管理システム「WILL」に過去の受注案件の情報を蓄積させており、現在約70万案件分の製品データを保有している。豊富なデータがあれば、類似案件で過去のデータを活用することで製造工程を作業者がすぐに確認できるため、作業が効率化し、余った時間を溶接士のレベルアップにあてたという。
 結果的に同社では2年間で100個以上のテストピースを作りあげ、超難溶接材とされているパーマロイ合金の溶接を実現したため、関わった溶接士の技術力が大きく底上げされるとともに、以前には引き受けられなかった高難度の依頼が次々に舞い込むようになった。
 長野県上田市の溶接事業所、アルカディアは、装置性能性能の向上により、中小事業所ならではのDXに取り組んでいる。同社のDXが特徴的なのは「溶接士をはじめとする技能者の作業を最大化すること」に主眼としている点だ。
 具体的には、同社では、アマダ製ファイバーレーザ搭載ブランク工程統合マシン「ACIESーAJ」を中心に工場を設計した。同マシンを中心に溶接作業場、曲げ作業場、プログラムを組む作業場、受発注を行う事務所が、ほぼ等距離に配置されているため、「各現場から工場の稼働状況を目視する」ことができる。
 事務所では、受注状況や工場の稼働状況を目視しながら最適な受発注を行うことができる。また、プログラムも装置の稼働状況を把握しながら行うことが可能だ。また、溶接と曲げの作業場といった連続する作業場は隣合って配置されているため、受注から出荷まで一連の作業が滞ることなくスムーズに流れるように設計されている。
 デジタルデータは無理・無駄を省くことや、管理者が作業を振り返るタイミングでは有効だが、日々状況が変化する現場技能者にとっては必ずしも有効ではない。昨今の装置類は日新月歩で性能が向上しているため、加工だけでなく、資材管理や加工状況の振り返りといったデータ管理も装置に任せて、目で見た方が早い部分は作業者の目と割り切ることも、多品種小ロットを手掛ける中小溶接事業所には有効な工夫のようだ。結果的に同社では生産効率が1割向上したとしている。
 千葉県旭市に本社工場を構える溶接事業所のヒラノ。同社では建設機械部品を中心に、工作機械、自動車、医療の分野から、月間60ー70社分の薄板の溶接依頼が舞い込む。そんな同社のDXは、「2次元の図面を3次元化するサービス」。インドネシア企業と協業して立ち上げ、現在この取り組みは「月額定額制3次元図面おこしサービス」として認知され、70社以上が顧客となっている。
 同社の平野利行社長は「鉄骨の図面などは『REAL4』といった専用ソフトウェアがあり3D化することができる。しかし、板金事業所が手掛ける薄板素材の複雑形状を自動的に3D化するのは現状では難しい。当社では長年蓄積した3Dデータへの変換作業を、インドネシア人技能実習生に指導し、実習期間を終えて帰国後したインドネシア人と協業してサービスを生み出した」と話す。否定したくなるのを抑えて「とりあえずやってみる」から全ては始まるようだ。


提供元:産報出版株式会社

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