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溶接接合業界ニュース

三木鉄工、3次元溶接・切断自動化システムを導入

 労働人口の減少により、ものづくりの現場では人手不足が深刻化している。このような中、複数の溶接方法とプラズマ切断を一体化したダイナミックな自動化システムを導入した溶接事業所が注目を集めている。配管とタンクや鋼構造物などの製造を手掛ける三木鉄工(山口県下関市、三木修治社長)はこのほど、3次元ハイブリット溶接・プラズマ切断自動化システム「HARO」(設計・開発=愛知産業)を導入した。
 同システムは現在、1000Aまでの配管の突合わせ溶接や隅肉溶接に加えて枝管分岐部分と鞍型をした箇所の接続部分など複雑な形状の溶接も自動化。またガスプラズマによる高精度の3次元切断にも対応する。
 同社はステレンス鋼を中心に配管・タンク・水道施設関連製品を多品種少量で製造しており、小口径のサニタリー配管や半導体関連産業向けのチューブから1500Aを超える大口径の製缶物まで多種多様な製品を製作。また大口径ステンレス溶接継手の製品化に成功しており、三木社長は「当社の技能者や技術は溶接など金属加工のスペシャリストとして技術と技能の研鑽に励んできた。大口径ステンレス溶接継手を自社で製作できる企業は国内でも数少ない」と胸を張る。
 一方で「企業として持続的に発展するためには生産力と効率を高めながら、品質向上と標準化にも繋がる自動化・省力設備の導入は欠かせないと考えていた」と述べた上で、「生産能力をより、強固するためにも多品種少量生産に加えて、中規模ロットへの対応力を高めつつ、主力製品の一つでもある大口径継手製造の工程を大幅に省力化できるダイナミックな自動化システムを実現したいと構想していた。HAROの導入にあたっては当社に必要な装置や機能を選定した上で、オーダーメイドに近い形で愛知産業に設計・開発を依頼した」と導入の経緯を語る。
 同システムはプラズマ切断用に加えて、フロニウス社製のプラズマ・ミグ・マグ・ティグ溶接電源を搭載。溶接ロボット(マニピュレータ)が自動でトーチを装着し、ロボット関節の可動のみならず、ロボット自体が移動するためのテーブルと、溶接ワークを回転させるポジショナーなどからなる複合加工システムとなる。
 切断はアメリカのハイパーサム社製ガスプラズマの電源を採用。切断部が酸化しない切断が可能で鋼管に対して枝管、差穴など様々な形状の3次元切断を、高精度・高品質に行うことができる。
 プラズマ溶接には溶接電源にプラズマモジュールを追加して使用しており、プラズマ効果による熱集中により深い溶け込みが得られ、厚肉の大型構造物などの第1層における溶接に適している。
 ミグ・マグ溶接用の溶接電源には、パルスマルチコントロールプログラムを搭載している。ワイヤセンサーによる位置補正機能や電流・電圧の一元制御により、高い効率性と高品質を両立した溶接が可能で2層目以降の溶接や仕上の溶接などに使用に最適だという。
 同システムは繊細で精密なティグ溶接にも対応。電流、パルス、溶加速度が細かく調整できるので、継手製作などで鞍型をしたT字の接続部分で開先を取った裏波溶接の初層やフランジ部分の溶接などに適する。
 ロボットのマニピュレータはダイヘン製の6軸アームを採用しており、3次元で複雑な形状したワークの溶接や切断に対応し、溶接箇所への位置補正はレーザセンサー同調にて行う。ロボット教示はPCからのオフラインティーチングと、ティーチングペンダントからのティーチングの併用ができる。
 同装置の導入により大径継手製造における製造能力の飛躍的な向上と、品質の安定化の両立に成功。溶接と切断に関わるリードタイムが17・5時間掛かる製品で同設備を使用した場合は3 時間となり、5分の1以下まで減少。また、大径継手製造のみならず、長さ6メートルまでのプレハブ配管やタンクの製造などにも活用可能で業務の幅を広げることにも成功した。
 三木社長は「現在は回転式ポジショナーを使用し、配管や製缶の製作を中心に適用している。ロボットの可動域が広く、各電源も高性能なため、ポジショナー部分を変更することで板材やH形鋼などでも高品位な切断や溶接ができる。自動化システムとして自由度が高く、既存の主力製品の生産性と能力の向上だけではなく、幅広い産業分野からの新規案件の獲得にも繋げていきたい」とし、今後の展開に意欲をみせる。


提供元:産報出版株式会社

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