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溶接接合業界ニュース

新卒者獲得に注力する溶接事業所

労働力人口が減少傾向にある中、将来を見据えた若手溶接士の雇用が溶接事業所の大手、中小を問わず、重要性を増している。特に、工業高校などの新卒者の雇用にあたっては、大手や中堅企業であっても毎年必要な人数を確保している溶接事業所は限られている。そこで、10年以内に工業高校生の新卒者を連続で雇用した経験のある企業を取材し、人材獲得戦略について聞いた。
 東京都の工業高校新卒者を例にとると、高等学校の中で全日制工業科があるのは18校で、卒業生8736人の中でも、授業で溶接に携わる「機械科」の生徒は1701人。就職する卒業生の割合は53・7パーセントのため788人が対象となる(東京・教育庁2019年度調査)。この卒業生が溶接・旋盤・板金・管理・事務・設計など枝分かれしながら就職先を探すことになるが、大手求人サイトで「溶接」「東京」のキーワード検索を行うとヒットは8772件ヒット(10月14日時点)だ。多くの溶接事業所にとって、推定求人倍率は70倍の人材獲得は狭き門だが、工夫とPRで乗り越えられたケースもある。
 新卒者の連続雇用に成功している、橋梁の溶接を軸とするセイワホールデイングス(三重県木曽岬町、野見山勇大社長)が大切にしているのは「入社後の成長プロセスを明確化すること」だ。新卒者の退職理由で多い「入社から一定期間が経った後の自己成長が描けない」という不安を解決することで、長く勤務する魅力がある企業だとPRしているという。
 具体的に、同社では積極的なM&Aを行い保有する技能数を増やし、「成長を感じるポイント」を増やした。新卒者から見ると溶接技術の力量差は理解しにくいため、溶接だけだった保有技能を、めっき・メンテナンス・表面処理と、M&Aを通じて拡張。同グループでは各技能を一定レベルまで習得すれば昇級していく制度もある。
 同グループの野見山社長は「積極的なM&Aのおかげで、当グループには各社に各技能のスペシャリストが在籍している。そこで、グループ内を行き来した技能教育に注力し、獲得した技能数で昇級する方針を組み込んだ。熟練者と超熟練者の違いは経営者でも把握しにくいため、技能習得数で昇級していく方が全員ともに理解しやすい。成長の基準が整っていれば、10年以上かけて多技能を習得しようと志す新卒者の目に留まる」と話す。
 「工場は『古くさい』といった印象を払拭したことで新卒者を獲得した」という溶接・板金を生業とする小林製作所(石川県白山市、小林靖典社長)。
 同社の特徴は受注後に「検索してから作業する」ことだ。これを実現したのは、積極的なIT投資により独自開発したIoTカメラシステムだ。
 同システムは、データ容量を極力小さく保管する性能に特化させたことで、抜群の検索性を保有している。同社では仕事の依頼があれば、自動的に担当者に仕事が振り分けられ、過去の類似案件から「いつ・誰が・どのように・何の素材で・どれくらいの時間で」を検索してから、溶接士が作業にあたる。システム開発者の一人である小林靖弘専務取締役は、「ITへの苦手意識をなくせば、経営側も『溶接は楽しい仕事だ』と胸をはることができる」とし、新入社員でも安心して溶接できる環境を構築している。
 「溶接を『身近なもの』として捉えてもらえば、サッカー選手のように将来の夢になり得る」と話すのは、橋梁・製缶溶接を得意とする釧路製作所(北海道釧路市、羽?洋社長)だ。
 同社がユニークなのは、VR溶接シミュレータを駆使して、近隣の「小・中学生」で溶接の講習を行っていること。VRは場所を選ばず安全に溶接を体験できるため、就職活動のタイミングで「近所の溶接事業所で子供の頃に溶接を習った」と、思い出してもらえれば、就職先の選択肢に残る可能性は格段に向上するという。


提供元:産報出版株式会社

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