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溶接接合業界ニュース

構造物を支える現場溶接

 建築や橋梁など社会を支える重要な役割を果たす鋼構造物。都心の再開発や国土強靭化に向けた工事などの現場では屋外での現場溶接が欠かせない。現場溶接は天候の影響に加え、溶接環境が毎回異なり難しい溶接姿勢が求められるなど、溶接士には高い技能が求められる。このような現場では溶接士の技量に加えて事前の準備と作業の段取り力が鍵となる。また溶接士不足解決の手段として現場溶接ロボットの適用も進みつつある。屋外の現場溶接に求められる対策や技術を取材した。
 橋梁・建築の溶接工事を手掛ける東京フラッグ(東京・江戸川区)は「復興の架け橋」ともされる「気仙沼湾横断橋」(宮城県気仙沼市)で、気仙沼湾内に設置した主塔の一部と閉合ブロックを含む24ジョイントの主桁などで現場溶接を担当。主塔主桁ともに炭酸ガスアーク溶接を使用し、主塔ではコベルコROBOTiX製の小型可搬型溶接ロボット「石松」を併用し溶接を行った。
 同橋は橋長1344メートルで陸上部は664メートル、海上部は680?。主塔高さは海面から115メートルとなり、主塔と主塔の長さである支間長が360メートルで、鋼材使用量は8500トンを超えると推定される国内でも有数の長大橋。
 同社が担当した部分は海上での中厚板溶接となるため温度や湿度に加えて、風の影響を特に受ける。対策として同社では堅牢な風防を使用し、除湿暖房機や電熱ヒーターなどを活用。溶接品質を確保しながらの施工を実現した。
 この他、都心の再開発では大手ゼネコンを中心に多関節や可搬型のロボットを用いた現場溶接の適用や技術開発も進んでおり、ロボットと溶接士の適材適所での現場溶接施工が今後さらに加速すると見られる。
 ■配管の現場溶接
 都市インフラの整備に欠かせない埋設配管では風に強い被覆アーク溶接の強みが生きる。一方で近年では配管溶接の内側に厳しい品質を求める発注者が多く、一層目はティグ溶接を使用し、二層目以降に被覆アーク溶接を適用するコンビネーション溶接の適用が期待されている。埋設配管工事を手掛ける横田アスコム(東京・江東区)では今後、埋設配管の現場でコンビネーション溶接の適用が増加することを見越しての準備を進める。埋設配管の現場では道路を掘った深さ約2メートルの数畳分ほどの地下スペースに配管を埋設する作業を実施することもある。溶接に加え開先加工などの前加工なども全てが地下にいる技能者が行う。
 必要な工具を全て地下に置くことはできないため、地上にいる作業員とコミュニケーションを取りながら必要な工具と不要となった工具を手際よく交換する。本溶接前の挿管と呼ばれる鋼管を溶接する位置に据付ける作業やクランプによる固定、開先加工やルートギャップの設定などの準備を段取り良く行うことが重要だ。
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 国内では近年、再開発によるビルの新設・建て替えや老朽化した橋の架け替えなどの現場工事も多いが、こうした現場では被覆アーク溶接や半自動溶接はもちろん、スタッド(ネジなど)と鋼板との間に発生させたアーク熱によりスタッドと鋼板を溶かし、溶融した鋼板にスタッドを溶着させるスタッド溶接が活躍する。
 大規模なスタッド溶接工事の現場では100万本のスタッド溶接を行うこともあり、現場において2人1組でスタッド溶接を行う場合、平均すると1日2000本のスタッドを1組で溶接するケースもあるほか、量だけではなく品質も重要であり、1本1本が欠陥のない溶接を行う技量も必要となる。
 スタッド溶接は現場内を移動しながら溶接していくため、移動の導線や資材を補給するタイミングなど事前の段取りが重要になる。
 


提供元:産報出版株式会社

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