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溶接接合業界ニュース

期待高まる溶接協働ロボット

 溶接現場が人手不足への対応を求められる中、真っ先に考えるのは、ロボットによる自動化であろう。ただ、多品種少量製品が多く、工場スペースも限られている中小溶接事業所にとって、ロボットによる溶接の自動化は難しい課題となっている。そこで装置メーカー各社は協働ロボットと最新のセンサ技術を用いたティーチング技術により課題解決を提案する動きが活発化している。
 産業用ロボットは高い速度で稼働し、また非常に大きな力を発揮する。このため、人がロボットの可動範囲内に不用意に近づいてしまうと、深刻な事故につながる可能性がある。そこで、産業用ロボットを安全に稼働させるために労働安全衛生規則では、産業用ロボットを使用する際は安全柵を設置し、人の作業エリアと隔離することが求められていた。
 これにより、産業用ロボットの導入にあたっては、ロボット本体のサイズに合わせた、安全柵を設置するエリアを設けなければならず、工場内の作業空間が限られているような中小の工場などでは導入が困難だった。
 ところが、2013年の労働安全衛生規則が改正。人がそばにいるとき、安全な速度と力で動作し、万一、人と接触した場合は安全に停止する機能を持ち、厚生労働省が定めるリスクアセスメントを実施する条件を満たす場合は、ロボットの使用する際の安全柵の設置が不要になった。
 この安全柵を不要にする条件を満たし、人と協調して働くことのできるロボットが、協働ロボットとなる。
 ただ、安全柵が不要になっても溶接ロボットの場合、アーク光やスパッタなどに対する対策が必要になる。このため、溶接に協働ロボットを適用するメリットは少ないように感じられる。ところが、安全柵を不要にすることで、中小企業のロボット導入の大きな課題を一つクリアできることになった。ティーチングである。
 自動車などの大量生産では、基本的に製品のモデルチェンジをするまでは、ロボットのティーチングによるロボットの稼働データを使い続けることができる。ところが多品種少量生産の場合、わずかな数を生産してすぐにティーチングにより、ロボットの稼働データを書き換えなければならない。
 ティーチング時間は、ロボットの性能やワークなどによって変わるが、例えば、熟練溶接士が5分でできる溶接が、ロボット溶接だとティーチングだけで30分かかるという話も聞かれる。つまり、多品種少量生産の場合、ティーチングに時間がかかるため、溶接ロボットを導入するより、熟練技能者に溶接を任せた方が生産効率が高いという課題があった。
 そこで、協働ロボットの登場である。
 従来、人がロボットに触れるには、電源を落とす必要があった。ところが協働ロボットであれば、アークのでていない状態であれば、ロボットに振れられるようになった。そこで、従来のようにティーチングペンダントを使用するのではなく、人がロボットのアームを持って自分で溶接するようにティーチングができるようになり、ティーチング時間を大幅に短縮できるようになった。もちろん、若干の位置ずれなどは、ロボットが自動で補正する。
 さらに、さらに、ロボットが自動で開先を3次元スキャンし、ティーチングデータを自動生成したり、タブレットで開先の写真を撮影するだけでロボットが自動でティーチングデータを生成するなど、人によるティーチングそのものを不要にする技術も登場している。
 また、ロボットの小型軽量化により、ロボットと溶接機を1台の台車に乗せて手軽に移動できるようにした製品も登場。これにより、鉄骨や造船など、移動の多い大型構造物の溶接でも簡単なティーチングで溶接を開始し、終了後は次の溶接箇所に適用するなど、溶接現場で手軽に溶接ロボットを適用できるようにした。また、作業スペースの限られた中小の溶接工場などでは、普段は倉庫などに溶接ロボットを格納し、必要なときにロボットを持ち出して使用することができるため、作業スペースを有効に使うことができる。もちろん、ティーチングも手軽にできるため、すぐに溶接を開始することができる。
 協働ロボットの登場により、溶接ロボットの適用分野拡大に大きな期待がかかる。


提供元:産報出版株式会社

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