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溶接接合業界ニュース

川崎重工、液化水素タンクの溶接技術

 世界初の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」搭載の液化水素タンクを製作した川崎重工業の溶接士3人がこのほど本紙の取材に応じ、苦労を重ねて完遂した溶接工程の一端を語った。同タンクはセ氏マイナス253度の液体水素に対応。シールドガス、溶接材料、溶接電流・電圧などの各種条件を細かく検討したほか、蒸発を防ぐために二重構造にしたため、極度に狭い場所やホコリの許されない厳しい環境下での溶接となった。同社は数年内にさらに大型の液化水素運搬船を建造する予定で、溶接現場では「培った知見を活かしていく」とし、さらなる挑戦に意欲をみせる。
 セ氏マイナス253度の液化水素を内容物とする輸送タンクとタンクから伸びる配管類は、主にオーステナイト系ステンレス材で作られ、タンク・配管ともに侵入熱を防ぐため魔法瓶のような真空二重構造になっている。
 これらの溶接方法を検討する段階で、配管の作業環境がより過酷になることがわかった。
 配管は全て人の手によるティグ溶接で行うが、ホコリ一つ入れてはいけない環境が必要であるため、専用の作業テントを作ることになった。ここで作業する溶接士は、こまめな掃除を欠かさず、毎回新しい皮手袋を着用し、酷暑の中でも防塵服を着て溶接を行うことになる。
 配管担当の今西雄太さんは「常に清潔にするため神経を尖らせていた」と話す。
 配管は、ひずみを防ぐため鋼製架台に固定して溶接した。そのため、一部(配管の下側)は架台の中から上向きで溶接する必要がある。今西さんは身長190センチ超あり、配管溶接のまとめ役である伊藤慧さんも同185センチ。体を入れるだけでも難しい中での溶接が求められ、心身ともに消耗する溶接作業になったという。
 溶接では、トーチ角度や運棒、裏波が酸化しないように流すバックシールドガス流量などを調整し、まず直線配管同士を溶接してからエルボ(曲がり)部分を溶接した。試作品を含めると2年超のプロジェクトとなり、時に夜勤が続く状況だったが、伊藤さんは「楽しかった」と振り返る。
 船に搭載するタンク(容量1250立方メートル)は、曲げ加工した鏡板と胴部分を溶接して作り上げた。一部は自動化されていたが、タンク上部にある突起部分の溶接は、岸本洋典さん(「すいそ ふろんてぃあ」溶接工程まとめ役)らがタンク内に入り、らせん状の階段が錯綜する狭い場所で、酸欠に気を付けながらの溶接となった。
 巨大なタンクは、外側を溶接するために回転させる必要がある。そのためのローラーがタンクの重みで故障したり、回転を続けるうちにズレが重なって溶接線が合わなくなったりと順調に進んだわけではない。溶接部の健全性を確認するX線検査の枚数も膨大な量になったという。
 このように難易度の高い溶接を経て完成した「すいそ ふろんてぃあ」は昨年5月に神戸を出港し、オーストラリアで液化水素を積んだあと、2月25日に神戸港に帰還。神戸港にある貯蔵タンク(川重製造)に充填され、クリーンエネルギーとして利用が期待されている。


提供元:産報出版株式会社

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