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溶接接合業界ニュース

川崎重工、マイナス253度の極低温溶接

 セ氏マイナス253度。極低温の液体水素が触れる金属の溶接に、川崎重工業が挑んでいる。今年3月に完成した世界初の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」に搭載されたタンクや受入基地の貯蔵タンク、配管類は、工法開発とそれを実践する両面で難しい溶接が求められるプロジェクトだった。どんな過程をたどったのか―。
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 「すいそ ふろんてぃあ」に搭載されている1250立方メートルの貯蔵タンクは、川重の播磨工場(兵庫県播磨町)で製作された。主要素材はオーステナイト系ステンレス鋼で、ほかの種類も複数使用。シールドガスや溶接材料、溶接電源など最適条件を細かく検討し、最良の溶接方法を導き出して、溶接工法を完成させた。
 タンクは液水の蒸発を防ぐために魔法瓶のような真空二重構造になっている。そのため、せまい場所や限られた姿勢での溶接になり、難易度は高い。そこで社内で選抜された溶接士を同社の技能訓練プログラムに基づいて鍛え、実践することになった。
 当初は6名程度が毎週、半日程度で合計約100時間の訓練を行って育成を進めたが、最終的には倍の10人以上が関わることになった。溶接方法は、半自動やティグ、そして機械による自動溶接を使い分けている。
 船に搭載するタンクが工場内で作られたのに対し、受入基地の貯蔵用タンク(2500立方メートルタンク=国内最大)は多くが現場で溶接されている。現場溶接は姿勢が様々で、かつ二重構造のため狭い場所の施工となる。現場溶接を減らすため、配管類やタンクの部材はできるだけ工場で製作して現地に運び、風に強く設備が簡便な被覆アーク溶接で多くを溶接した。船内タンクとは違う難しさがあったという。
 川重は種子島宇宙センター(鹿児島県)にあるロケット燃料用の液化水素貯蔵タンクを製作した実績があり、LNGやLPGの貯蔵タンクも多く製造しているので、一定の経験値はあった。ただ、巨大で厚い板の液化水素のタンクは久しぶりだ。縦型より難しい球形タンクでもある。同社生産本部の溶接担当・新見健一郎さんは「うまくいくかどうか、最後まで心配だった」と振り返る。
 溶接品質をいかに安定させるか―。技術スタッフや職場監督者は、この点に最も大きなエネルギーを注ぎ込んだという。失敗があれば、補修で材質が悪くなり、のちの不具合の原因になりかねない。だから出来る限り溶接は一度で成功させる。どういう条件でどんな道具を使えば一番いい方法になるか。それを研究して事前に検討し、実践できる溶接士の育成に努めて、見事完成させている。


提供元:産報出版株式会社

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