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千成工業、「設備ファースト」で技術力高める

 「設備ファースト」を謳い、2000年頃より、可能な限り毎年設備投資を続けてきた溶接事業所の千成工業(愛知県小牧市、木村典雄社長)では、各種設備を「技能者の技術力を証明ためのツール」と捉えている。帝国データバンクの設備投資調査では、設備投資の予定があると回答した企業の割合が10パーセント近く減少している中、設備の導入を続け、総合力を高め続けている同社のものづくりを取材した。


 創業した1952年から溶接技術を武器に、自動車産業のものづくりを支える千成工業。同社では主に自動車部品や、自動車部品を製造するための工作機械部品を、炭酸ガスアーク半自動溶接とティグ溶接、ファイバーレーザ溶接を駆使して製造している。溶接士は7人で、1・2ー3・2ミリの鋼板を複雑形状に組み合わせた手のひらサイズの部品を溶接することを得意としている一方で、顧客要望があれば板厚30?以上で3?を超える大型構造物の溶接を担当することもあるという。
 そんな同社の特徴は「設備ファースト」であること。そのため、敷地面積990平方メートル(工場面積約530平方メートル)という工場としては決して広くはない立地に、アマダ製のベンディングマシン「FMB? NT」といった大型設備のほか、先端技術の一つであるアマダ製ファイバーレーザ溶接機「FLW300MT」、今年導入した最新のベンダー機器設備であるアマダ製「HG8025」、ティグ溶接機9台、半自動溶接機5台、スポット溶接機1台、プラズマ切断機、シャーリング設備などが所せましと設置されている。
 在籍する7人の溶接士は、それぞれが1?以下の精度で正確な溶接施工を実現できるレベルにあるにも関わらず、設備投資を欠かすことなく続けてきた理由を、同社の木村彰治専務は「自動車産業における溶接作業は2000年頃から『熟練者が担当した』という説明ではなく『どのブランドの溶接機で電流と電圧のどのように設定した作業に臨んだ』という数値的な説明が求められるようになっていった。そのため、技術力を言語化する工程に辟易した当社の熟練溶接士は半数が会社を離れてしまった。しかし、技術力を説明しているうちに、設備のプログラム設定などの情報は、強みとしている溶接技術を対外的に証明するツールになることに気がついた。設備を使いこなすのは、溶接と同じように奥行きがある技術であり、総合力が会社の力なのだという考えに至った」と話す。
 実際に、最近同社で導入したアマダ製のレーザ加工機「FOM?2412NT」は、従来設備の限界が最大9ミリだった切断作業を16ミリまで可能とし、作業効率を格段に向上させた。また、最新ベンダー機器設備であるアマダ製「HG8025」で鋼板を数?ひずませて、溶接工程で発生するひずみと相殺する技術も正確性が向上。作業内容や工程を説明できることで、可視化されにくい技能者の技術力の価値を、安すぎず高すぎない「適正な価格」でやり取りできるようになったという。
 00年代前半に溶接士の半数を手放してしまった同社では、再度溶接士の雇用・育成し始めた。設備投資に舵を切るとともに、大幅に技能者の平均年齢が下がったことは、08年のリーマンショックのタイミングで、結果的に多くの顧客を獲得した。「多品種小ロットの部品を製造できる溶接事業所は多くない。多くの溶接事業所が停止・廃業してしまうタイミングで発注する側の企業が大切にするのは、技術力以上に、今後も継続的に仕事を発注できる事業所か否かだ。当時、在籍する技能者の平均年齢が20代だった(現在は30代前半)ため、長期的な付き合いができる企業だと判断され、取引先が10倍以上になった」(木村専務)
 同社では、イノベーションや事業改革といった大きな変革ではなく、「淡々とできる範囲で設備投資を続けることを辞めない」という継続したレベルアップで、現在まで顧客数と売上を伸ばし続けてきた。設備の進化と溶接士の技術力により、外注してきた作業を少しずつ社内で対応できる環境を整えてきた同社が次に狙うのは、最終製品までの組み立て分野だという。日進月歩の事業成長はまだ続きそうだ。


提供元:産報出版株式会社

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