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溶接接合業界ニュース

溶接の達人を訪ねて

 産業界や社会インフラなどで溶接士や技能者の技は幅広い場面で活躍しているが、中には一朝一夕では習得することができない名人技といえる高レベルの技能がある。溶接関連工程の自動化が進むなかでも、人だからできる名人技は溶接士の技と日々の鍛錬が一際輝く場所だ。溶融池がほとんど見えない、不可視の溶接や鏡像を見ながらの溶接に加えて、超極厚板をガス溶断で精密かつ高品位に加工する名人技を紹介する。
 溶接士が溶接を行う場合は、溶融池の溶込みやアークの状態を見ながらトーチおよびホルダを動かしていくことが基本だ。その溶融池がほとんど見えない箇所において音を頼りに高品質に溶接するという達人の技をエリオットグループ袖ヶ浦工場(千葉県袖ヶ浦市)の溶接士・三浦秀明さん(生産部製缶課)は取得している。
 三浦さんは入社以来14年間羽根車の溶接一筋に携わってきたスペシャリスト。同社の羽根車は2枚の円盤の間に放射状に3次元加工した翼板を配置したコンプレッサの部品で溶接は被覆アーク溶接で行われており、わずかな隙間に溶接棒を入れて内側から溶接を開始し、手前へと進めるため溶融池が見にくい。
 そのため、溶接中は音を頼りにして溶接棒を動かしていく「羽根車の溶接では一番奥から溶接を開始するが隙間も12ミリ以下と狭あいなケースもあり、溶融池がほとんど見えない」と三浦さんはその難しさを語る。
 その上で「アークの音が大きすぎると熱を加えすぎており、小さいとしっかりと溶接できないという判断をしている」と勘どころを三浦さんは述べた。
 同社において羽根車の溶接は社内の試験に合格し、認定を受けた溶接士しか、担当することができない。高度な技能を持つ溶接士が多い袖ヶ浦工場においても35人の溶接士のうち羽根車の溶接の社内認定を保持する溶接士は三浦さんを含めて限られる。「失敗の許されない溶接だからこそ厳しい社内認定がある。そういった仕事を任せられているということは自信になる」と胸を張る。
 プラントの溶接では直接の目視難しい箇所は鏡に映った鏡像を見ながら溶接を実施する現場もあり、そうした事業所は全体の溶接技能が高い。東北発電の生産や技能訓練、研究開発の拠点となる利府製作工場(宮城県利府町)の溶接士教育では入社後、長期の訓練期間を設けており、同工場では若くして頭角を現す溶接士も多い。
 製作・溶接課には第65回全国溶接技術競技会被覆アーク溶接の部で優秀賞を受賞した及川将司さんなど20代にして全国レベルで活躍する溶接士などが多数在籍する。
 同社の発電プラントの溶接では電気事業法関連などの案件もあり、40ミリ以上の板厚がある配管をティグ溶接と被覆アーク溶接を組み合わせて溶接する上、RT検査や外観試験などの厳格な非破壊検査に適合する品質が求められる。
 さらに、狭あい部や入り組んだ配管部分など直接の目視難しい箇所は鏡に映った鏡像を見ながら溶接を行うこともあるなど難易度の高い溶接を厳格な検査を通過するような高品質の溶接を行うという名人技が日々求められる。
 及川さんは「自分達が行う溶接は溶接の自動化が進むなかでも、人だからできることをやっているという自負がある。溶接士の技能が光る場所でもあり、そこが高く評価されることでやりがいを感じる」と溶接士としての矜持を述べた。
 厚板・超極厚板の溶断加工を手掛ける中村機材(中村武史社長)には300ミリ以上の超極厚板をガス溶断で精密かつ高品位に加工する能力を持つ「溶断名人」と呼ばれる高度熟練技能者とその技能を継承する技能者在籍。
 同社では独自にカスタマイズしたガス溶断設備を使用することで300ミリ以上の超極厚板を複雑な形状および立体で溶断を行う場合でも寸法誤差約2―3ミリの精度で溶断をする精密極厚溶断という名人技を武器にする。
 超極厚板で精密な溶断を行うためにガス流量や燃焼温度、溶断機のスピード、位置などを技能者が目視で炎や鋼板の状態、溶断機の動きを見極めながら操作盤で調整していく必要がある。こういった部分を極めながら高品位の溶断を可能にしてきたのが同社の星野裕二副工場長のような高い知見と技能や経験を持つ、溶断名人と呼ばれる高度熟練技能者たちの職人技だという。


提供元:産報出版株式会社

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