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溶接接合業界ニュース

物質・材料研究機構、溶接性に優れた合金開発

 物質・材料研究機構(NIMS、橋本和仁理事長 )は3月10日、溶接しても割れが発生しない制振ダンパー用合金材料の開発に成功したと発表した。合金を十字やH字形に溶接することが可能となるため、より高い荷重に耐えられる制振ダンパーの開発が期待される。東日本大震災から10年を迎え、今後も南海トラフ地震など大規模地震が想定される中、建築構造物の耐震・制震技術の進展が求められている。
 鋼材制振ダンパーは、地震時に弾塑性変形することで地震のエネルギーを熱エネルギーに変換して揺れを抑え、建物を地震から守る役割を果たす。
 東日本大震災で問題になった長周期地震動など、繰り返しの弾塑性変形に対する耐久性を高めるため、NIMSはこれまで竹中工務店、淡路マテリアとの共同研究により、疲労耐久性10倍のFe?Mn?Si系合金(FMS合金)を開発。2014年に制振ダンパーとして名古屋市の高層ビル「JPタワー名古屋」に適用されている。18年にはFMS合金と溶接構造用鋼の異材溶接技術を開発し、溶接ブレース型制振ダンパーとして、大規模展示場「Aichi Sky Expo」に適用をしている。
 その後、さらに耐荷重性を高めるため、制振ダンパー心材であるFMS合金を十字、H字に溶接して大面積化することが求められていたが、FMS合金同士の溶接は、高温割れ(凝固割れ)が発生しやすかった。制振ダンパー心材を十字、H字にするには、緻密な溶接施工条件の構築が必要とされ、溶接しても割れが発生しないFMS合金の開発が求められていた。
 NIMSの研究チームは、高い疲労寿命を得るための成分設計と、高温割れを防ぐための成分設計を組み合わせた第二世代のFMS合金開発に着手。添加するニッケルとクロムの成分比を調整することで、溶接しても超長疲労寿命を示す新合金の開発に成功した。
 第一の成分設計指針として、NIMS振動制御材料グループ澤口孝宏グループリーダーらは、FMS合金の超長疲労寿命が可逆的な原子の運動に起因することに着目。成分から疲労寿命を予測する手法を開発した。この手法により、FMS合金の基本構成元素であるFe、Mn、Siに加えて、添加元素のCr、Niをどのような配合比にすれば、可逆的な変形機構を発現させることができるのか予
測が可能となった。
 続いて溶接・接合グループの中村照美グループリーダーらは、FMS合金の溶接時の凝固挙動に及ぼす成分の影響を明らかにした。第一世代のFMS合金は 、凝固時に偏析が生じてリンなどの不純物元素の濃度が増加し、割れやすくなるという欠点があった。割れが生じにくい第二世代FMS合金の設計のためには、溶接時の凝固偏析が生じないように成分を調整する必要がある。
 凝固偏析を防ぐには、Cr、Niの配合比の調整が有効であることが知られており、研究グループは第二世代FMS合金の成分は超長疲労寿命の条件(Fe、Mn、Cr、Ni、Siの配合比)を満足させながら、溶接時の凝固挙動に影響する条件(Cr、Niの配合比)を調整することで設計を行った。
 その結果「第一世代FMS合金とほぼ同等な疲労寿命を持ちながら、溶接による凝固時に偏析が生じず、割れも起きない」(研究グループ)FMS合金の開発に成功した。
 開発した合金は第一世代のFMS合金とほぼ同性能の疲労寿命を示しつつ、実際に溶接しても割れが発生しないことを実験で確認した。
 今回の研究成果は、第二世代FMS合金の溶接構造体化、部材化に関する事業「超長疲労寿命の溶接構造による高耐力ブレース型建築用制振ダンパーの開発」(事業代表:竹中工務店)として、科学技術振興機構の「研究成果最適展開支援プログラム」に採択。今後、このプロジェクトのもとで、大断面溶接構造制振ダンパーの開発を進めていく方針。


提供元:産報出版株式会社

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